法改正アラート
罰則あり 施行済み 2026年4月1日施行

労働安全衛生法の大幅改正——個人事業者・一人親方を使う事業者は令和8年4月から対応必須

建設業製造業化学工業機械器具製造業運送業清掃・警備業その他労働者以外の作業従事者を活用する全業種

公開日: 2026年4月6日

最重要ポイント

何が変わったか

労働者と同じ場所で働く個人事業者等が安全衛生法の保護対象となり、注文者(発注側)が安全教育の提供・保護具の確保等を義務付けられる。化学物質SDSの通知義務違反にも罰則が新設された。

誰が影響を受けるか

建設業、製造業、運送業、化学工業など個人事業者・一人親方を現場に入れる全業種の発注側事業者、化学物質を製造・販売する事業者、ボイラー・クレーン等の特定機械を保有する事業者

何をすべきか

該当する場合のみ要対応: 4項目の確認事項あり(個人事業者活用の有無でスクリーニング)

令和8年(2026年)4月1日、労働安全衛生法の大幅改正が施行された。最大の変化は「個人事業者・一人親方の保護」の義務化だ。これまで労働安全衛生法は「労働者(雇用関係にある者)」の安全を守る法律だったが、今改正で一人親方やフリーランスといった個人事業者が同じ現場で作業する場合にも、発注側の事業者が安全管理義務を負うことになった。あなたの会社が建設・製造・運送・清掃等の現場で外注先の個人事業者を使う場合、対応が必要かどうか、この記事で確認してほしい。

具体的な変更内容

今回の改正(令和7年法律第33号、令和7年5月14日公布)は5本の柱からなる。

第1の柱: 個人事業者への安全衛生保護(令和8年4月1日施行、一部令和9年4月1日)

労働者と同じ場所で作業する個人事業者等(一人親方、フリーランス、副業者等)が、労働安全衛生法による保護の対象・義務の主体として正式に位置づけられた。具体的には:

  • 注文者(発注側)の義務拡大: 危険有害作業を請け負わせる一人親方等に対し、安全衛生教育の提供、保護具の使用確保、健康障害防止措置等を実施する義務が課せられる
  • 混在作業の安全管理強化: 自社労働者と一人親方が混在する現場では、災害防止のための統合的な安全管理が求められる
  • 個人事業者自身の義務化(令和9年1月以降): 個人事業者が業務上で負傷した場合の報告制度も創設される

なお、退避・立入禁止等の措置については既に令和7年4月から施行されており、今回はそれに加えて保護措置の範囲がさらに広がる。

第2の柱: 化学物質規制の強化(令和8年4月1日・10月1日施行)

  • SDS(安全データシート)の情報通知義務違反に罰則を新設(令和8年4月1日)
  • 化学物質の成分名が営業秘密の場合、有害性の低い物質に限り代替化学名での通知を認める秘密保護制度を導入(令和8年4月1日)
  • 個人ばく露測定を作業環境測定として正式位置付け(令和8年10月1日)

第3の柱: ボイラー・クレーン等の検査制度再構築(令和8年1月・4月施行)

特定機械等(ボイラー、クレーン等)の設計審査・製造時等検査・性能検査・型式検定等について、民間の登録機関が実施できる範囲が拡大。検査申請先や手続きが変わる機器がある。

第4の柱: ストレスチェックの50人未満事業場への義務化(施行日は令和10年頃までに政令で別途指定)

現在は努力義務となっている50人未満の事業場へのストレスチェック実施が義務化される。ただし施行日は追って政令で定められるため、令和8年4月1日時点では義務化されていない。

第5の柱: 高年齢労働者の安全対策(令和8年4月1日)

高年齢労働者(概ね60歳以上)の労働災害防止措置が事業者の努力義務となり、国が指針を策定する。

対象事業者の範囲

今回の改正で最も広く影響を受けるのは、以下の事業者だ。

直ちに対応が必要なグループ:

  1. 個人事業者・一人親方を現場で使う全業種の「注文者」 — 建設業(最も影響大)、製造業、運送業、清掃業、警備業など。外注先が法人か個人かを確認し、個人事業者を使う場合は安全管理体制の見直しが必要。

  2. 化学物質の製造・販売業者 — SDS通知義務違反に罰則が新設されたため、SDSの整備状況確認が急務。使用する側(受取側)については、受け取るSDSが「代替化学名」で記載される場合があることへの注意が必要。

  3. ボイラー・クレーン等の特定機械を保有・製造する事業者 — 検査手続きが変わるため、次回の定期検査前に申請先・手数料の確認が必要。

当面は様子見で対応準備を進めるグループ:

  1. 50人未満の全事業者 — ストレスチェック義務化は令和10年頃の施行見込み。今から実施体制の検討を始めると余裕を持って対応できる。

  2. 高齢者を雇用する全事業者 — 努力義務化のため罰則なし。ただし転倒・腰痛等の防止措置は安全配慮義務の観点からも望ましい。

対応期限とスケジュール

対応期限内容対象
令和8年1月1日(施行済み)機械検査機関の欠格要件・不正対処強化登録機関・検査業者
令和8年4月1日(施行済み)個人事業者保護の注文者義務、化学物質罰則・秘密保護、機械検査民間化、高齢者努力義務個人事業者活用事業者・化学物質業者・特定機械保有者
令和8年10月1日個人ばく露測定の法的位置づけ化学物質使用製造業等
令和9年1月1日個人事業者自身の報告義務等(一部)個人事業者・発注事業者
令和9年4月1日注文者・個人事業者義務の残り個人事業者活用事業者
令和10年頃(政令指定)ストレスチェック50人未満義務化50人未満全事業者

既に令和8年4月1日は到来しているため、個人事業者を現場で使っている場合は今すぐ対応状況の確認が必要だ。

想定されるコストと負担

対応項目想定コスト・負担備考
個人事業者への安全教育提供低〜中: 既存の安全教育資料の流用・業界団体研修の活用で対応可能建設業では元請への義務が重い
保護具の提供低: 既存在庫の活用・作業内容に応じた追加購入
SDS整備・更新低〜中: 既に化学物質管理体制がある場合は軽微。未整備の場合は専門家に依頼
特定機械検査(手続き変更)低: 事務的負担のみ。費用は従来と大きく変わらない見込み申請先が変わる場合あり
ストレスチェック実施(義務化後)低〜中: 1人あたり数百〜1000円程度/年。外部機関委託も可能施行まで猶予あり

建設業の中小元請け事業者にとっては、個人事業者への安全教育と保護措置が最も実務的な負担になる可能性がある。ただし、既存の雇用労働者向け安全教育と同等の内容を個人事業者にも提供すればよい場合が多く、追加的なコストは限定的とみられる。

対応チェックリスト

STEP 1(スクリーニング): 自社に個人事業者・一人親方が現場で入っているか確認する

このSTEPが「No」の場合、□2・□3は不要。□4・□5だけ確認すればよい。

□1. 今すぐ: 自社の発注先・外注先リストを確認し、個人事業者(一人親方、フリーランス)が現場に入っているか確認する

□2. 令和8年4月1日以降(対象者のみ): 個人事業者に対する安全衛生教育の提供体制を整備する(既存の安全教育資料・業界団体の研修を活用)

□3. 令和8年4月1日以降(化学物質業者のみ): SDS(安全データシート)の整備状況を確認し、通知すべき情報の漏れがないか点検する

□4. 令和8年4月1日以降(特定機械保有者のみ): 次回の定期検査・性能検査の申請先・手続きを確認する(厚生労働省ウェブサイトまたは機械安全担当局へ問い合わせ)

□5. 令和10年頃まで: ストレスチェックの実施体制を準備する(50人未満事業場。中央労働災害防止協会や地域産業保健センターに相談可能)

まとめ

令和8年4月1日の施行により、一人親方・個人事業者を現場で使う事業者は、これまで労働者だけに課せられていた安全衛生管理義務が個人事業者にまで拡大した。建設・製造・運送等の業種では実務上の対応が急がれる。化学物質の通知義務違反への罰則新設も見逃せない。一方、ストレスチェックの50人未満への義務化は令和10年頃が施行見込みであり、今すぐの対応は不要だが早めの準備が望ましい。まず自社が「個人事業者を現場で使っているか」を確認することが最初のステップだ。

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