労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)が改正され、2段階で施行される。2026年4月1日には、病気やけがを抱えながら働く従業員への「治療と仕事の両立支援」が事業主の努力義務となった。さらに2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止のための措置が義務化される。業種・規模を問わず労働者を1人でも雇用している事業主が対象であり、自社の対応状況を確認する必要がある。
具体的な変更内容
4月施行: 治療と仕事の両立支援(努力義務)
第27条の3が新設された。事業主は、病気やけがで治療を受けている従業員について、就業によって症状が悪化しないよう、相談に応じるための体制整備と必要な措置を講ずるよう努めなければならない。求められる対応の例として、次が挙げられる。
- 基本方針の策定と従業員への周知
- 管理職・従業員への研修・意識啓発
- 相談窓口・担当者の設置
- 時短勤務、時差出勤、テレワーク、傷病休暇などの制度整備
「努力義務」であるため罰則はなく、行政による助言・指導の対象となる。産業医を置かない小規模事業者でも、外部の医療機関や保健師との連携によって対応可能とされている。なお、この枠組みは2016年から厚生労働省が普及してきたガイドラインを法的根拠のある指針へ格上げするものであり、ガイドラインに沿って既に取り組んでいる事業者にとっての追加負担は限定的となる。
10月施行: カスタマーハラスメント防止措置(義務)
カスハラとは、顧客・取引先等からの言動が社会通念上許容される範囲を超え、従業員の就業環境を害するものを指す。2026年10月1日からは、全事業主に対して次の5項目の措置が義務付けられる。
- カスハラに毅然と対応する方針の明確化と周知
- 相談窓口の設置と担当者への研修
- 発生後の迅速な事実確認と被害者への配慮
- 悪質案件への対処方針(警察通報・出入り禁止等)の事前定義と周知
- 相談者・行為者のプライバシー保護
違反した場合、報告徴求命令・助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は事業主名が公表される可能性がある。
対象事業者の範囲
業種・従業員規模の制限はなく、労働者を1人でも雇用している全事業主が対象となる。パート・アルバイトなど非正規労働者も両立支援の対象に含まれる。なお、同時に施行される改正で、採用選考中の求職者へのセクシュアルハラスメント対策も義務化される。
まとめ
4月施行の両立支援は努力義務であるため、ガイドラインに沿った取り組みを進めていれば大きな追加負担は生じにくい。一方、10月施行のカスハラ対策は措置義務であり、対応方針の明確化と相談体制の整備が必要となる。