2026年4月1日、令和8年度税制改正大綱に基づく租税特別措置法の改正が施行されました。少額減価償却資産の即時経費化上限の引き上げ、インボイス2割特例の終了、賃上げ税制の見直しなど、業種を問わず全中小企業に関わる内容が含まれます。自社への影響をまず下記の一覧で確認してください。
| 改正ポイント | 対象 | 急ぎ度 |
|---|---|---|
| 少額減価償却資産の特例が「40万円未満」に拡充 | 中小企業者等(従業員400人以下) | すぐ活用できる |
| 賃上げ税制の教育訓練費上乗せが廃止 | 全企業 | 次の申告前に確認 |
| インボイス2割特例が2026年9月末で終了 | 元免税事業者・個人事業主 | 9月末までに確認 |
| 特定生産性向上設備投資促進税制が新設 | 投資額5億円以上の中小企業 | 大型投資を計画中の場合のみ |
| 事業承継税制(特例措置)が延長 | 後継者への株式承継を検討中の企業 | 期限前に準備を |
具体的な変更内容
少額減価償却資産の特例が「40万円未満」に拡充
中小企業者等(青色申告、資本金1億円以下または個人事業主、従業員400人以下)が備品・パソコン・ソフトウェアを購入した際に、購入年に全額を損金算入できる特例の上限が引き上げられました。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 即時全額損金算入の上限 | 30万円未満 | 40万円未満 |
| 適用期限 | 令和8年3月31日 | 令和11年3月31日(3年延長) |
| 従業員数要件 | 制限なし | 常時400人超の法人を除外(新追加) |
年間の損金算入合計には300万円の上限があります。35万円のノートPCや38万円の業務用ソフトウェアが購入年に全額経費化でき、法人税の節税効果が出るタイミングが早まります。
賃上げ促進税制の「教育訓練費上乗せ」が廃止
賃上げ促進税制において、教育訓練費(社員研修費など)の増加に応じた税額控除の上乗せ措置が、中小企業を含む全区分で廃止されます。中小企業向けの賃上げ促進税制の基本制度(賃上げ率に応じた法人税控除)は維持されますが、これまで上乗せ控除を活用していた場合は来期以降の税額控除額が減少します。
インボイス制度の経過措置が変更・終了
元免税事業者でインボイス登録した事業者が利用できる「2割特例」(売上消費税の2割納付)は2026年9月30日で終了します。個人事業主のみ、2026年10月から2028年9月の2年間「3割特例」に移行できますが、法人は対象外です。
免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の経過措置は段階的に縮小されます。
| 時期 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2026年9月末まで | 80%(現行) |
| 2026年10月〜2028年9月 | 70%(変更) |
| 2028年10月〜2030年9月 | 50% |
| 2030年10月〜2031年9月末 | 30% |
| 2031年10月以降 | 0% |
対象事業者の範囲
本改正は業種を問わず全中小企業に影響しますが、主な対象別の整理は以下のとおりです。
- 全ての中小企業・個人事業主: インボイス経過措置の終了、賃上げ税制の教育訓練費上乗せ廃止、給与計算(基礎控除・扶養判定の変更)
- 設備投資を予定している中小企業(青色申告、資本金1億円以下、従業員400人以下): 少額減価償却資産特例の拡充(30万円以上40万円未満の設備が対象に追加)
- 後継者への株式承継を検討中の企業: 事業承継税制(特例措置)の適用期限が令和10年3月31日まで延長
- 大規模設備投資を計画中の中小企業(投資額5億円以上): 特定生産性向上設備等投資促進税制(取得価額の4%税額控除または即時償却)が新設
対応期限とスケジュール
| 期限 | 確認・対応事項 |
|---|---|
| 2026年4月1日〜 | 少額減価償却資産(40万円未満)の特例を活用した設備購入が可能 |
| 2026年4月1日〜 | 賃上げ税制の教育訓練費上乗せが使えなくなることを確認 |
| 2026年9月30日 | インボイス2割特例の終了。10月以降の消費税計算方法(原則課税 or 簡易課税)を確認 |
| 2026年10月1日〜 | 免税事業者からの仕入控除割合が80%→70%に変更 |
| 令和10年3月31日 | 事業承継税制(特例措置)の株式贈与・相続の期限 |
| 2027年分(令和9年分)〜 | 青色申告特別控除が65万円→75万円(電子帳簿保存が条件、個人事業主向け) |
想定されるコストと負担
| 対応内容 | 費用・負担の目安 |
|---|---|
| 顧問税理士への改正影響確認 | スポット相談で1〜5万円程度(顧問契約があれば含まれる場合も) |
| 給与計算システムの改修(基礎控除・扶養判定の見直し) | クラウド給与ソフトは自動更新が多い(確認推奨)。カスタム開発の場合は別途 |
| インボイス経過措置終了に伴う消費税申告方法の変更 | 税理士との打ち合わせが中心。会計ソフトのアップデートで対応可能な場合が多い |
| 少額減価償却資産の特例活用(設備購入) | 追加費用なし(通常の設備投資と同じ) |
| 事業承継税制の継続手続き | 税理士・弁護士費用:5〜20万円程度(株式評価や計画策定の複雑さによる) |
対応チェックリスト
全ての中小企業(まず確認)
- □ インボイス2割特例の終了期限(2026年9月30日)を確認し、いつまでに消費税計算方法の切り替えを税理士と決めるか日程を決める
- □ 免税事業者との仕入取引がある場合、2026年10月以降の控除割合変更(80%→70%)を経理担当者に周知する
- □ 給与計算システムが基礎控除・扶養判定の改正に対応しているか確認する(クラウドソフトは自動更新の場合が多い)
設備投資を予定している中小企業
- □ 30万円以上40万円未満の備品・ソフトウェア購入を計画している場合、2026年4月以降の購入で特例適用が可能か税理士に確認する(年間300万円の上限あり)
賃上げ税制を活用していた中小企業
- □ 教育訓練費上乗せがなくなった場合の来期の税額控除額を顧問税理士に試算してもらう
- □ 試算結果をもとに賃上げ・研修計画を見直す必要があるか判断する
後継者への株式承継を検討中の企業
- □ 特例承継計画の提出済みを確認し、株式の贈与・相続を令和10年3月31日までに完了させる計画を立てる(提出未済の場合は一般措置での対応を税理士に相談)
食事補助を福利厚生で実施している企業
- □ 月額非課税上限が3,500円→7,500円(税抜)に拡大されたことを確認し、食事補助制度の見直し・拡充を検討する
まとめ
令和8年度の租税特別措置法改正は、全中小企業が関係するインボイス経過措置の終了と、設備投資・賃上げ・事業承継それぞれの場面で活用できる(または注意が必要な)複数の改正が一度に施行された内容です。特にインボイス2割特例の終了(2026年9月30日)は全事業者共通の期限であり、10月以降の消費税処理方法を今から顧問税理士と確認しておくことが最優先の対応となります。少額減価償却資産の特例拡充は追加コストなしで活用できる節税機会であり、設備投資を検討している場合は購入タイミングの最適化を合わせて相談してください。
本記事は令和8年度税制改正大綱(2025年12月19日与党公表・2025年12月26日閣議決定)および2026年4月時点の情報に基づいています。今後の政令・通達等によって詳細が変わる可能性があります。最新情報は国税庁ウェブサイトまたは顧問税理士にご確認ください。